空港の気になるサインデザイン

空港の気になるサインデザイン

旅の始まりはいつもワクワクする。空港へ出かけて「Depertures」というサインを見ると、気分はもう旅の始まりだ。

他にも「Baggage reclaim」「Passport Control」「Transfer」「Fright Connections」など空港以外であまり見かけない英語表記は旅の気分を盛り上げてくれる。

 

空港のサインシステムで有名なフォントといえば、アドリアン・フルティガー (Adrian Frutiger) がパリ=シャルル・ド・ゴール空港のためにデザインした「Frutiger (フルティガー) 」だろう。ヘルベチカより視認性がより高く、遠くから、そして様々な角度からも認識しやすいため、現在では多くの空港や鉄道など広い公共施設で採用されている。パリ=シャルル・ド・ゴール空港以外でも、パリのメトロ、アムステルダム・スキポール空港、日本の東京メトロ、また、ロンドン・ヒースロー空港はフルティガーを少し調整したフォントが使われている。なかでも、アムステルダム・スキポール空港では黄色に黒く大きな文字で使われているため、広いスペースの空港内で遠くからサインがよくわかる。私がよく行くロンドンのヒースロー空港も同じ黄色に黒い文字のサインで、飛行機から降りて「Teminal5」とか「Arival」と表示されているサインを見ると「ああ、ロンドンに着いた」と旅の始まりを感じさせてくれる。

 

「Frutiger 」は、スイス人のフォントデザイナーとして有名なアドリアン・フルティガーがデザインしたフォント。フォントデザイナーとして1957年に「Universe」を発表して注目されていた彼に、1968年、パリ=シャルル・ド・ゴール空港の建築家ポール・アンドリュー(Paul Andreu)が1974年にオープンするシャルル・ド・ゴール空港のためにフォントを含んだインフォメーションサインシステムを依頼。以降現在までパリ=シャルル・ド・ゴール空港では「Frutiger 」を使ったサインシステムが使われている。その2年後1976年にフォントはアドリアン・フルティガーの名前でもある「Frutiger 」という名でLinotype社から一般向けにリリースされた。

フォント「Frutiger 」のリニューアルバージョンとして、1997年ミュンヘンのアルテピナコテーク美術館のために開発され、2000年にリリースされたFrutiger Next(フルティガー・ネクスト) 、2009年にはNeue Frutiger (ノイエ・フルティガー)が発表・発売されている。「Neue Frutiger」はオリジナルの改訂版としてアドリアン・フルティガーとライノタイプ社のタイプディレクター小林章によって共同制作された。

 

アドリアン・フルティガーは1928年、スイスのウンターゼーン生まれ。印刷会社で見習いとしてはたらき、その後チューリッヒ工芸専門学校(現在のチューリッヒ芸術大学)で木版画、彫刻、ドローイングなどを学ぶ。1952年にはフランスの活字鋳造所ドベルニ・エ・ペイニョ社でフォント開発を担当。1957年「ユニバース」を発表。他にもOCR-B(1968)、「Versailles(ヴェルサイユ)」(1984),「Avenir(アヴェニール)」(1988)など生涯で50種類以上ものフォントをデザインしている。2015年9月10日にスイス・ベルンで87歳で逝去。