ベッヒャー夫妻、ゲルハルト・リヒター、アンドレアス・グルスキーなどを輩出したアートの街「デュッセルドルフ」

ベッヒャー夫妻、ゲルハルト・リヒター、アンドレアス・グルスキーなどを輩出したアートの街「デュッセルドルフ」

オランダとベルギー国境近く、ドイツ中西部にある人口約64万人の街「デュッセルドルフ(Düsseldorf) 」。
世界遺産や有名な観光名所があるわけでもなく、観光の街としてはあまり馴染みはないかもしれないが、この街はアート関係者にはよく知られている街でもある。

その理由はデュッセルドルフ旧市街地、アルトシュタット(Altstadt)エリアに数々のアーティストを輩出した有名な芸術学校「デュッセルドルフ美術アカデミー(Kunstakademie Düsseldorf)」があるからだ。

 

デュッセルドルフ美術アカデミーについて

このアカデミーは、ヨーゼフ・ボイス(Joseph Beuys)/ 1947-1951年、ベルント・ベッヒャー(Bernd Becher)/ 1957-1961年、ゲルハルト・リヒター(Gerhard Richter)/ 1961-1964年、アンドレアス・グルスキー(Andreas Gursky)/ 1980-1987、トーマス・ルフ(Thomas Ruff )/ 1977-1985年など多くの有名なアーティストたちが学んだアカデミー。日本人のアーティスト奈良美智も1988年から1993年まで在籍している。

なかでも、1976年にデュッセルドルフ美術アカデミーに初めて設置された写真クラスの教授となったベッヒャー夫妻の影響を受けた写真家、アンドレアス・グルスキー、トーマス・ルフ、トーマス・シュトゥルート(Thomas Struth)、カンディダ・ヘーファー(Candida Höfer)たちは「ベッヒャー派」と呼ばれ、写真アートにおける新しい表現者として現在も活躍している。

このアカデミーが興味深いのは、多くのアーティストたちが学んだだけでなく、その後自分たちが学んだアカデミーで教授となって生徒を教えているところである。

ヨーゼフ・ボイスは1961年から1972年まで、ベッヒャー夫妻は写真クラスができた1976年から1996年まで。ゲルハルト・リヒターは1971年から1994年、アンドレアス・グルスキーは2010年から2018年、トーマス・ルフは2000年から2006年まで教授を務めている。アートと教育、学生と生徒との関係性がうまくいっている理想的なアカデミーのあり方ではないだろうか。

デュッセルドルフ中央駅(Düsseldorf Hauptbahnhof)からデュッセルドルフ美術アカデミーまでは、地下鉄U70、U74、U75、U76、U77のどれかに乗って4つめのTonhalle/Ehrenhof駅で下車。

 

デュッセルドルフとは

デュッセルドルフは、ドイツ16州のなかでノルトライン・ヴェストファーレン(NRW)州に位置し、面積約217平方km、人口約64万人の州都。街の中央をライン川が流れ、支流にあるデュッセル川から、その地名がついた。デュッセルドルフは「デュッセル川の村」という意味。ドイツの首都ベルリンまでは飛行機で約1時間、電車で約4時間、アムステルダムやアントワープまで電車で約2時間でいくことができる。少し南のケルンまでは電車で30分前後。ヨーロッパではロンドン、パリに次いで日本人居住者が多く、ヨーロッパで最大といわれる日本人街もある。

 

 

日本からデュッセルドルフまで

日本からは成田からデュッセルドルフ空港駅(Bahnhof Düsseldorf Flughafen)までANAの直行便が毎日でている。所要時間は日本から約12時間。デュッセルドルフ市内へはデュッセルドルフ中央駅空港を出たら、空港ターミナルCの地下にあるデュッセルドルフ空港ターミナル駅(Düsseldorf Flughafen が始発・終着になっているSバーン11(S11)を使って移動するのがわかりやすい。
デュッセルドルフ中央駅(Düsseldorf Hauptbahnhof)まで約12分、片道€2.90。市内の移動についてはSバーン(電車)、Uバーン(地下鉄)、シュトラッセバーン(トラム)、バスなどが24時間乗り放題の『24時間券』(24-StundenTicket)が便利。『48時間券』(48-StundenTicket)もある。24時間券は€7.10、48時間券は€13.50。多くのヨーロッパと同じように、電車に乗る前に必ず駅で打刻すること。タクシーを利用する場合は約15分で、料金は約€30~35。レストラン、ホテル、タクシーなどでは10%前後のチップが必要。

 

 

デュッセルドルフの建築物

デュッセルドルフの街の目印として、もっともわかりやすいのがライン川沿いにある高さ234メートルのラインタワー(Rheinturm)。デュッセルドルフの街中ではこのタワーが目印にもなる。このタワーの少し南側のメディエンハーフェン(Medien Hafen)エリアは、かつて交易港として栄えたエリアを再開発したもので、お洒落なレストラン、クラブ、アパレル関係のオフィスなど若者に人気のエリアで、有名な建築家がデザインしたビルもいくつかある。

代表的なものとしては、カナダ出身の建築家フランク・O・ゲーリー(Frank Owen Gehry)がデザインした3つのアシンメトリーのビルGehry-Bauten(1999 住所:Neuer Zollhof 2-6)が有名。ビルバオ・グッゲンハイム美術館(Guggenheim Museum Bilbao /1997 スペイン)、ヴィトラ・デザイン・ミュージアム(Vitra Design Museum/ 1989 ドイツ)、ルイ・ヴィトン財団美術館(Fondation Louis Vuitton / 2014 フランス)などで知られているフランク・O・ゲーリーらしく、曲がりくねった3種類のビルは素材も色も形や高さも異なった個性的なデザインになっている。1990年代末に再開発されたこのエリアには、他にもフランス人建築家、クロード・バスコーニ(Claude Vasconi)がデザインしたLe grand bateau(2002 住所: Zollhof 2-8)、イギリス人建築家デイヴィッド・チッパーフィールド(David Chipperfield)がデザインしたKaistrasse Studios(1997 住所:Kaistraße 16)、アメリカ人建築家スティーヴン・ホール(Steven Holl)によるKaistraße 18などの建築物を見ることができる。

また、デュッセルドルフのライン川東岸エリアHansaallee通りには、アンドレアス・グルスキーとトーマス・ルフが共有するスタジオStudios for Two Artistsがあり、建築デザインを手掛けたのは日本のプラダやユニクロ 東京のデザインを手掛けたスイスの建築家、ヘルツォーク&ド・ムーロン( Herzog & de Meuron)。

ゲルハルト・リヒターは長い間デュッセルドルフを拠点としていたが現在はケルン在住、フォトグラファーのアンドレアス・グルスキーとトーマス・ルフは現在もデュッセルドルフで活動をしている。

 

イラスト:フランク・O・ゲーリー(Frank Owen Gehry)がデザインした3つのアシンメトリーのビルGehry-Bauten(1999)