デザインとアートの街、スイス「チューリッヒ」

デザインとアートの街、スイス「チューリッヒ」

20世紀を代表する建築家ル・コルビュジエ(Le Corbusier)やグラフィックデザイナー、ヨゼフ・ミューラー=ブロックマン(Josef Müller-Brockmann)を輩出し、デザインの国といわれているスイス。そんなスイス最大の都市チューリッヒは、2017年ファッションブランドのVetementが本社機能をフランスから移設、また、2019年10月には無印良品がスイス1号店をオープンするなど、現在でも世界のアートやクリエイティブシーンから注目され続けている。

 

■スイス、チューリッヒについて
チューリッヒ(ドイツ語 : Zürich / 英語 : Zurich 英語での発音は「ズーリック」)は、チューリッヒ州の州都でスイス中央部、全長27kmの細長いチューリッヒ湖北西部に位置する。スイスの総人口は約854万人(2018年末)、スイス国籍が約639万5300人(74.9%)、外国籍が約214万7000人(25.1%)と外国籍が約25%を占めている。チューリッヒが最も人口が多く、続いてジュネーブ、バーゼル、ローザンヌ。スイスの首都であるベルンは人口5番目の都市となる。ヨーロッパの内陸にあって、北にドイツ、西にフランス、東にオーストリアとリヒテンシュタイン、南にイタリアと接するため、 ドイツ語(約63%)、フランス語(約23%)、イタリア語(約8%)、ロマンシュ語(1%未満)の4つの公用語が使われている。チューリッヒにはいくつか美術館があるがチューリッヒ芸術大学内にあるスイスデザインミュージアム(Museum für Gestaltung Zürich)や1787年にオープンした歴史あるチューリッヒ美術館(Kunsthaus Zürich)などがおすすめ。

 

 

■日本からチューリッヒ市街地まで
成田空港からチューリッヒ空港(Zurich Airport ZRH)まではスイスインターナショナルエアラインズ(Swiss International Air Lines)の直行便が毎日1便運行している。飛行時間は約12時間半で、成田空港を午前中に出発、同日午後にチューリッヒ空港に到着する。
チューリッヒ空港から市街地までの距離は約12キロと近く、電車、タクシー、トラムで行くことができる。おすすめはスイス国鉄(SBB)でチューリッヒ中央駅(Zürich HB)まで所要時間10分~15分、料金は2等車だと6.8CHF(約750円)。タクシーで市街地までは20分程度で、料金は約70.00CHF(約7700円)と少し高い。トラムを利用する場合はNo.10のトラムに乗って中央駅まで47分とかなり時間がかかる。市内の交通はバス、電車、トラムが乗り放題で博物館や美術館の入場料が無料あるいは割引になる得な「チューリッヒ カード(Zürich CARD)」が便利。1日券(大人 27 CHF、子ども 19 CHF)と3日券(大人 53 CHF、子ども 37 CHF)がある。チケットは停留所にある券売機や駅等で購入できる。券売機で買った1回券や1日券は自動で日時が記載されるので問題ないが、この「チューリッヒ カード」はヨーロッパの多くの都市と同様、チケット購入後は使用開始前に打刻する必要があるので、券売機のすぐ横にある打刻機で打刻するのを忘れないように。まれにある検札チェックで打刻印がないと高額な罰金を払わされる。流しのタクシーはないので、タクシー乗り場で待つか、ホテルなどから呼んでもらう必要がある。料金はメーター制だが、初乗りで6CHF(約660円)に1kmごとに普通車の場合3.30CHF(約363円)が加算されるので、2キロで1000円以上になるので日本よりも高い。基本的にチップは不要。

 

 

■コルビュジエ・パヴィリオン / Pavillion Le Corbusier (上:イラスト)
Pavillon Le Corbusier
Höschgasse 8
8008 Zürich

スイスを代表する建築家、ル・コルビュジエがデザインした最後の建築物。完成前にコルビュジエが亡くなったため(1965年に死去)、彼は完成を見ることができなかった。チューリッヒ湖の湖畔にあるチューリッヒホルン公園(Zürichhorn)の美しい緑の中で、スチール(鉄骨)とガラスだけで作られた建物と緑や黄色などのパネルが印象的。コルビュジエの友人、ハイディ・ウェバー(Heidi Weber)の依頼によって作られたもので、コルビュジエの絵画やリトグラフなどを展示したプライベート・ミュージアム「Centre Le Corbusier – Heidi Weber Museum」として1967年から夏季の週末だけ一般に公開されてきた。現在は「コルビュジエ・パヴィリオン」と名前が変わっている。2019年からはスイスデザインミュージアムが運営するようになり、2019年は11月17日までの公開となっている。常設展としてチューリッヒ生まれのフォトグラファー、ルネ・ブリ(René Burri)の展覧会、企画展としてコルビュジエの作品が展示されているほか、トークイベントやパフォーマンスなどが行われている。現在のところ来年度における展示は未定。スイス生まれのコルビュジエだが、チューリッヒで見ることができるコルビュジエ唯一の作品になる。チューリッヒカードがあれば入場無料。

■ダダイズムの活動拠点、キャバレー・ヴォルテール (Cabaret Voltaire)
Cabaret Voltaire
Spiegelgasse 1
8001 Zürich

第一次世界大戦中、1910年代半ばにヨーロッパの都市やアメリカなど世界で同時多発的に起こった芸術運動「ダダイズム」発祥の場所。既存の秩序や常識、価値観に反対する芸術運動としてチューリッヒダダの拠点となったのがドイツの作家フーゴー・バル(Hugo Ball)とパートナーのエミー・ヘニングス(Emmy Hennings)が1916年2月5日にオープンした「キャバレー・ヴォルテール」。1916年7月28日、このキャバレー・ヴォルテールでフーゴー・バルが「Dada Manifesto」を発表した。名前はキャバレーだが、ギャラリー、酒場、劇場として、詩人、画家、作家、ダンサー、音楽家など様々なアーティストが集まり、詩の朗読、ダンスパフォーマンス、音楽などが催された。彼らは芸術表現スタイルを自由に用いることで、それまでの境界線を取り払おうともした。第二次世界大戦後は空き家になっていたが、その後市の所有物件となり、観光目的のために賃貸され2003年に同じ名前でバー、カフェとして復活。様々な展覧会やイベントなども開催されている。チューリッヒ旧市街のファッションストリートエリアでCOSやGUESSのすぐ近くにある。

 

 

 

 

■チューリッヒを拠点として活動していたグラフィックデザイナーによる『Neue Grafik』
『Neue Grafik : New Graphic Design : Graphisme Actuel : 1958-1965』
published by Lars Müller Publishers

1958年、チューリッヒを拠点として活動していたグラフィックデザイナー、ヨゼフ・ミューラー=ブロックマン、ハンス・ノイブルク(Hans Neuburg)、リヒャルト・パウル・ローゼ (Richard Paul Lohse)、カルロ・ヴィヴァレリ(Carlo Vivarelli )によって創刊された季刊デザイン専門誌『Neue Grafik』。ドイツ語のタイトル「Neue Grafik」が英語で「New Graphic Design」という通り、新しいグラフィックデザインを提示した誌面デザインとコンテンツはメディアとして高く評価されたにも関わらず、売上が伴わず、残念ながら1965年2月に、最終号となる17/18合併号が出版され休刊となる。現在ではデザインの歴史において、またスイスグラフィックデザインにおける貴重な資料としてオリジナルは高価な値段で取引されているが、2014年にスイスの出版社Lars Müller Publishersから全号が復刻され、1つのボックスケースに入って発売されている。