イタリア、『ミラノ』でブルーノ・ムナーリ(Bruno Munari)ゆかりの地を訪ねる

イタリア、『ミラノ』でブルーノ・ムナーリ(Bruno Munari)ゆかりの地を訪ねる

ブルーノ・ムナーリが生まれ、拠点としていた街「ミラノ」。ファッションとデザインの街として知られるミラノで、ブルーノ・ムナーリに関係する場所を紹介する。

 

ブルーノ・ムナーリ(Bruno Munari)について
1907年ミラノ生まれ。6歳から18歳までを両親の仕事の関係でミラノの東の小さな町ナディア・ポレジーネ(Badia Polesine)で過ごす。18歳でミラノの戻り、その後はミラノを拠点として活動。1920年代のイタリア未来派後期にアーティスト活動を開始するが、1930年代になると未来派とは距離をとるようになった。その後「役にたたない機械」「読めない本」といった実験的なプロダクトから、ダネーゼ社(DANESE MILANO)の照明やプロダクト、子どものための絵本まで、アーティスト、発明家、プロダクトデザイナー、グラフィックデザイナーなど様々な分野で活躍。1998年ミラノで逝去(90歳)。最後の仕事となったのは1997年に発売されたswatchの時計「Tempo Libero」。ブルーノ・ムナーリの魅力のひとつは、彼の生み出した作品がそこで完結するのではなく、揺れる、使う、折りたたむ、ページをめくるなど、受け手、使い手の想像力や手が実際に加わることで、より面白さ楽しさが広がっていくということだ。その“ 仕掛け”を彼はデザインしているといってもいい。「役にたたない機械」はまさにそのタイトルどおり、ただ着色された板や石が糸でぶら下げられただけの作品にもかかわらず、風の動きで揺れて様々な表情を見せる。また、1981年にジュリオ・エイナウディ(Giulio Einaudi)社から発行された「白ずきんちゃん(原題:CappuccettoBianco)」は絵がない雪をイメージさせる白いページがひたすら続くだけで、物語はまさに想像力だけで読者を楽しませる仕掛けになっている。日本でも人気のある絵本「霧の中のサーカス」や「闇の夜に」などはトレーシングペーパーを使ったり、穴があいていたりなど、まさに仕掛け絵本として読者の想像力をかきたてる。その遊び心、実験性、革新性こそが今でも高く評価されている理由のひとつだろう。彼の展覧会は世界各地でたくさん開催されてきたが、日本では生存中の展覧会として1965年に新宿伊勢丹で「ブルーノ・ムナーリ展」が開催されたほか、1995年にはギンザ・グラフィック・ギャラリーでも展覧会が開催されている。また、2007年には生誕100周年を記念した展覧会が世界各地で開催された。

 

ブルーノ・ムナーリに関するいくつかの書籍(イラスト左上から時計まわりに)

生誕100年記念「ブルーノ・ムナーリ展 あの手この手」図録(朝日新聞社2007)
2007 年から2008年にかけて日本で開催された生誕100年記念展覧会「ブルーノ・ムナーリ展 あの手この手」の図録。板橋区立美術館、滋賀県立近代美術館、刈谷市美術館で巡回展として開催された。ブルーノ・ムナーリの初期、未来派の作品からはじまり、息子アルベルトのために作った仕掛け絵本、話すフォーク「ムナーリのフォーク」、子ども玩具「ジジ」、美術評論家瀧口修造との書簡など、全313図録に及ぶブルーノ・ムナーリの主たる作品及び年譜が収録されている。

Nella notte buia
(初版 Muggiani 1956 , 再販 Maurizio Corraini 1996,リプリント版 2007)
1956年にMuggiani社から出版され、1996年にMaurizio Corraini社から再販された書籍。邦題「闇の夜に」。16ページごとに黒い紙、トレーシングペーパー、グレーの厚紙といった違う紙が使用されている。黒い紙には小さな穴があり、月やホタルが見えるような夜を演出し、半透明のトレーシングペーパーは草むらの茂みを想像させる仕掛け。またグレーの厚紙にギザギザの異なるサイズの穴は恐竜などが生活する岩を表すなど、紙を使った演出が面白い。

Supplemento al dizionario italiano(初版 Maurizio Corraini 1963, リプリント版 2016年)
1958年にCarpano社から出版されたものが、1963 年Maurizio Corrainiから改訂版として発行されたもの。「イタリア語辞典別冊付録」として、イタリア人の様々なジェスチャーが4ヶ国語のコメントとともに紹介されている。一時は絶版になったが2016年には再販され現在ミラノの書店などで12ユーロで販売されている。本書をはじめブルーノ・ムナーリの書籍はイタリアのMaurizio Corraini社から刊行、そして再販されているものが多い。

Bruno Munari’s Zoo(初版 World Publishing Company 1963, 再販 Chronicle /Maurizio Corraini 2005)
初版は1963年World Publishing Companyから出版された絵本。ライオンや象などのブルーノ・ムナーリの描いた動物の横に「シマウマはストライプのパジャマを着た動物だ」「サイにとって、プールはいつも狭すぎる」など短いユーモア溢れるコメントが書かれている。表紙というのにキリンの顔部分がない絵が使われているのもブルーノ・ムナーリならではの愛嬌では。

Libro illeggibile MN1(初版 Maurizio Corraini 1988、リプリント版 1995)
「読めない本」シリーズの1冊。封筒に入った小さな小冊子で、文字も絵も何も印刷されていない色紙が様々な形に切られて閉じられているだけ。「白ずきんちゃん」同様、読者はページをめくるたびに目に入ってくる色や形から様々なことを想像するしかない。ブルーノ・ムナーリならではのアプローチの本といってもいい。

Ciccì Coccò(初版 FotoSelex 1982, 再販 Maurizio Corraini社 2000)
1982年の初版は正方形の違う判型で出版されたが、再販時には少しフォーマットを変えて発行されたもの。ブルーノ・ムナーリの作品というよりはカメラマンEnzo Arnonが撮影した子どもの写真にブルーノ・ムナーリがテキスト担当した一冊といったほうがいい。しかし、そのユーモアあるコピーのセンスはブルーノ・ムナーリならでは。イタリア語以外に、英語、フランス語の3 ヶ国語で掲載されている。

The circus in the mist( 原題 Nella nebbia di Milan)(初版 Emme edizioni 1968、再販 Maurizio Corraini 1996年、リプリント版 2000年 英語版)
邦題「きりのなかのサーカス」として日本語版が1981年に八木田宣子訳(好学社)、2009年に谷川俊太郎訳(フレーベル館)で出版されていたが現在は絶版。イタリア語の原題「Nella nebbia di Milan(ミラノの霧の中で)」とあるように霧のミラノが舞台の物語。トレーシングペーパーで霧を表現し、ページをめくるたびに絵柄が重なったり、色紙のページは様々な形で切り抜かれ、穴から次のページに絵が繋がったりしている。ページをめくるのが楽しい1 冊。

 

 

ミラノのブルーノ・ムナーリゆかりの地
ミラノで生まれ、ミラノを拠点として活動していたブルーノ・ムナーリ。彼にゆかりのある場所、彼の作品を見ることができる場所などをいくつかピックアップ。

DANESE showroom(ダネーゼ社 ショールーム)
住所:Piazza S. Nazaro in Brolo,15 – 20122 Milano
www.danesemilano.com
ブルーノ・ムナーリが数々のプロダクトデザインを担当したイタリアの家具・インテリアメーカー、ダネーゼ社のショールーム。最寄り駅は地下鉄M3のクロチェッタ(Crocetta) 駅またはミッソーリ(Missori) 駅。サンティ・アポストリ大聖堂(Chiesa dei Santi Apostoli)とナザロ・マッジョーレ(Basilica dei Santi Apostoli e Nazaro Maggiore) に隣接する広場Piazza San Nazaro a Baroloに面したショールームのウインドウには1964年にブルーノ・ムナーリがデザインした代表作でもある照明家具「FALKLAND」や、1957年にデザインした灰皿「CUBO」など、現在も生産されている商品が店内に展示されている。

 


The Museo del Novecento(20世紀美術館)
住所:Via Marconi, 1 Milano
www.museodelnovecento.org
2010年12月にドゥオーモ(Duomo) 広場の横にできた美術館。ノベチェント(Novecento) とはイタリア語で1900年代のこと。イタリアでは千をはぶいて900と表記するため「900」という数字がロゴのようになっている。ブレラ美術館(Pinacoteca di Brera)や市立近代美術館(Galleria Civica d’Arte Moderna)から20世紀の美術作品を移動し、未来派やモダンアートなど20世紀イタリアの美術作品が400点近く展示されている。外見は3階建に見えるが、中は6階建になっており、チケット売り場の後ろの回廊を登り2階(日本では3階)が入り口になっている。最上階の窓からはドゥオーモがよく見える。最上階の廊下を渡った先に大きなブルーノ・ムナーリの作品「Acona Bicombì」が展示されている。また少し離れた場所にも「役にたたない機会」シリーズなどブルーノ・ムナーリの作品が数点展示されている。この美術館1階に併設するブックショップには他の書店にはないブルーノ・ムナーリの書籍が比較的豊富に販売されているのでおすすめ。美術館の2階のレストラン「Giacomo Arengario」では、ドゥオーモを見ながらテラスで食事することができ、口コミなどでは評判がいいようなので、機会があればぜひ試してみたい。

 

Giardino Bruno Munari
住所:Via Toce, 9, 20159 Milano
ミラノやミラノ近郊にはブルーノ・ムナーリの名前を使った学校や教育機関などがいくつか存在するが、ブルーノ・ムナーリの名前がつけられた公園もある。ミラノ北部、地下鉄M3ザラ(Zara) 駅から歩いて5 ~ 6 分のところに「ブルーノ・ムナーリ庭園(Giardino BrunoMunari)」がある。面積100㎡ほどのこの公園には子どものための遊戯施設などがあるだけで、特にブルーノ・ムナーリだからといった特徴はないが、「BRUNO MUNARI ARTISTA 1907-1998」と書かれた看板を見ると、ブルーノ・ムナーリがいかにミラノの人々に愛されているのか実感できる。

 

 

上記以外でミラノでブルーノ・ムナーリに関するいくつかの場所

La Triennale di Milano /TRIENNALE DESIGN MUSEUM(ミラノ・トリエンナーレ /トリエンナーレ・デザイン・ミュージアム)
住所:Viale Emilio Alemagna, 6, 20121 Milano
2007年、ミラノ中心部のスフォルツェスコ城(Castello Sforzesco)センピオーネ公園内のPalazzo dell’Arteにオープンしたデザイン美術館。ファッションとデザインの街ミラノを代表するデザインミュージアムとして様々な面白い展覧会を開催している。2017年12月15日から2018 年3月25日までは、ファッショデザイナー、リック・オウエンスの世界初の回顧展「SUBHUMAN INHUMAN SUPERHUMAN」が開催されているほか、2017年4月1日から2018年2月18日までは子どものためのデザインをテーマにした「DESIGN FOR CHILDREN」が開催。会場ではブルーノ・ムナーリのコーナーもあり、ブルーノ・ムナーリの絵本や子どものためのスチール製家具「Abitacolo」など貴重な作品が展示されていた。この美術館があるPalazzo dell’Arteは1933年からミラノ・トリエンナーレの主会場になり、ミラノで初開催された第5回ミラノ・トリエンナーレにはブルーノ・ムナーリも参加するなど、ムナーリにとって所縁の深い場所でもある。

Via Vittoria Colonna 39 Milano
以前、ブルーノ・ムナーリのスタジオ兼住居があったところ。地下鉄M1デ・アンジェリ( De Angeli) 駅あるいはブオナローティ( Buonarroti) 駅から約400 ~ 500m。これといった特徴のある建物ではないが、静かな通りにベージュと淡い緑に茶色の枠がきれいな建築物。

Corso Magenta, 46 Milano
「最後の晩餐」で有名な教会サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会(Chiesa di Santa Maria delle Grazie) の前の道コルソ・マジェンタ(Corso Magenta)を教会から300mほど東にいったところに、ブルーノ・ムナーリがデザインしたモザイクの壁画があるビルがある。普段は入ることができないが、ガラス越しにエレベーターホールの壁面に左右非対称のモザイク模様が見ることができる。G:Associazione Bruno Munari

Associazione Bruno Munari(ブルーノ・ムナーリ協会)
住所:Via Bonaventura Cavalieri, 6, 20121 Milano
www.brunomunari.it
2001年、ブルーノ・ムナーリの息子、アルベルト・ムナーリ( AlbertoMunari) とその妻、ドナータ・ファブリ( Donata Fabbri) らによって設立されたブルーノ・ムナーリ協会は、地下鉄M3 トゥラーティ( Turati)
駅から約300mの場所、在ミラノ日本総領事館のすぐ裏、フランス総領事館や米国総領事館などがあるエリアにある。現在特に一般の人には解放はしていないようだ。

 

 

ミラノまでの交通方法

イタリア、ロンバルディア( Lombardia) 州の州都ミラノ。現在日本からの直行便はアリタリア航空1社のみ。飛行時間は成田空港から直行便で約12時間半、時差は8時間(サマータイム9時間)。ミラノには3つ空港があり、日本からの直行便はミラノ市街から北西約50キロのミラノ・マルペンサ国際空港( MXP) に到着する。ヨーロッパ線で乗り継ぎ便であれば市街地まで約7.5キロのミラノ・リナーテ( LIN) 国際空港が利用できる。ほかLCCのライアン・エアーなど欧州の格安航空会社が乗り入れるベルガモ・オリオ・アル・セーリオ( BGY) 国際空港がある。マルペンサ空港からミラノ市街地まではタクシーで約50分。料金は一律90ユーロ。鉄道では空港からミラノ中央駅( Milano Centrale)、カドルナ駅( Stazione di Milano Cadorna)までマルペンサエクスプレス( Malpensa Express) がある。(片道13ユーロ、ミラノ中央駅まで約52分、カドルナ駅まで約37分、いずれも30分に1本運行)。また、空港バスは片道8ユーロ、約50分で各駅に。3社のバスが運営されており、乗車券は空港にある各バス会社の窓口でも売っているが、購入したバス会社のバスしか乗れないので、バスに乗って購入したほうがいいだろう。ミラノ・リナーテ国際空港からはタクシーでミラノ中央駅付近まで20ユーロ程度なので、タクシーが便利。

ミラノ市内の交通手段

ミラノ市内の移動はタクシーのほか、主に地下鉄、バス、トラムがあり切符は共通切符。旅行者は1日券(24時間券)や2日券(48時間)が便利。ミラノのトラム・バスの路線は100路線以上あり使いこなせばかなり便利だが、一番わかりやすいのは地下鉄。地下鉄は現在M1,M2,M3,M5の4路線がある(M4は2018年1月現在工事中)。トラム・バスは乗車後切符に乗車時間をマシンで打刻、地下鉄は自動改札機で打刻されるものもある。最初の使用開始時間を1回だけ打刻すればいい。打刻すると切符の裏に小さな文字で記号や乗車日時の数字が印刷される。1日券の場合はその時間から24時間使用することができる。打刻を忘れて乗車し運悪く抜き打ちの検札があると高額な罰金を取られてしまう。特にマルペンサエクスプレスは検札が多いので要注意。時刻表や路線図などはミラノ市交通の公式アプリ「ATM Milano」やオフラインでも路線図やGPS機能で自分の位置がわかる「MuoviMI」がおすすめ。

ミラノから近郊へ

ミラノからフィレンツェ、ヴェネツィア、ローマなどへ電車で移動する場合には、インターネットの早割でe-チケットを安く購入することができる。e-チケットはプリントの必要はあるが打刻しなくてもいい。イタリア鉄道トレニタリア(Trenitalia) のフレッチャロッサ( Frecciarossa)は300キロ以上のスピードでフィレンツェまで約1時間40 分。2015 年にデビューした新型車両モデル、フレッチャロッサ1000の最高速度は360km/hと日本の新幹線より早い。また、2012 年4月に新規参入した高速鉄道イタロ( ITARO) は、ルカ・ディ・モンテゼーモロ(Luca Cordero di Montezemolo) 元フェラーリ会長とトッズのディエゴ・デッラ・ヴァッレ(Diego Della Valle) 社長などが共同出資している鉄道会社でネットワークや運行本数が少ないがトレニタリアと同じ線路を走ってる。イタロの車両デザインは有名なジョルジェット・ジウジアーロ( Giorgetto Giugiaro) が担当している。