デレク・ジャーマンが晩年まで過ごした、イギリス南東部の街『Dungeness(ダンジネス)』

デレク・ジャーマンが晩年まで過ごした、イギリス南東部の街『Dungeness(ダンジネス)』

1986年からDerek Jarmanが晩年まで過ごしたイギリス南東部の小さな街Dungeness。荒涼とした大地にフェンスもなくポツンと存在する「PROSPECT COTAGE」と名付けられた彼のコテージとその庭は、映画『THE GARDEN』の舞台となり、またその庭をテーマとして1995年に出版された書籍『derek jarman’s garden』は、多くの植物関係者たちに影響を与えてきた。

 

Dungeness について
Dungeness (ダンジネス、ダンジェネス)は、イギリス南東部ケント州、Shepwayエリアの南にあるエリア。イギリス唯一の砂漠地帯といわれるように、荒涼とした風景の中に、原子力発電所、送電線、灯台、石だらけの海岸、そして今回の目的でもあるDerek Jarmanのコテージのような小さな家がポツリポツリとあるだけの地域。海からは遠くにフランス本土が見える。発電所の北にはDungeness National Nature Reserve(ダンジネス国立自然保護区域)があり、海辺の荒涼とした風景とは一転して、豊富な緑や水に囲まれた自然に溢れ、600種もの植物やさまざまな生き物が生息し、ヨーロッパ最大の野生動物保護協会Royal Society for the Protection of Birds (RSPB)の自然保護区としても指定されている。海、植物、生物、そして原子力発電所という不思議な風景がこの街の魅力にもなっている。
2015年8月に、1964年からこのDungeness 地区を維持してきたDungeness estateが、発電所、パブ、2つの灯台、鉄道駅、個人所有のコテージをのぞく、468エーカー(約1,900 km2)の土地を£1.5ミリオンで売りに出したが、すぐに発電所を運営するEDF Energyが購入し、Dungenessの安全と保管を今後も管理していくことになった。

 

「PROSPECT COTAGE」
1986年、Derek Jarmanが購入したコテージ「PROSPECT COTAGE」。彼がAIDSで死ぬ1994年までここで過ごしていた。横の壁には木製アルファベットで作られたJohn Donneによるポエム「The Sun Rising」がある。このコテージは1900年に作られた建物で外側の黒色と黄色い窓枠は購入前からままのもの。家のまわりにはフェンスも何もなく、どこまでが庭で、どこからが私有地なのかもわかりにくい。地面も土ではなく、砂利ばかりのこの庭をDerek Jarmanは流木や穴の空いた石などを海から拾ってきて、Derek Jarmanの「庭」を作りあげていった。

 

『THE GARDEN』
「PROSPECT COTAGE」とDungenessの海岸や発電所近くなどで撮影した映像と、スタジオにパラダイスという庭を作って撮影し制作されたDerek Jarman監督の映画『THE GARDEN』。エクゼクティブ・プロデューサーとしてアップリンク代表の浅井隆が参加している。CDサイズのコンパクトなハードカバーの映画パンフレットは海老名淳によるデザインで、カバーまわりのグラフィック処理が当時とてもかっこよかった。DVDには付録として「PROSPECT COTAGE」で撮影された貴重なショートインタビューなども収録されている。彼の遺作になってしまったが、画面が青一色だけの『BLUE』(1993)も公開当時は衝撃的で話題になったが、20年以上たった今見ても、Derek Jarmanのクリエイションがすごかったと感じることができる素晴らしい映像だ。いまだに彼の熱狂的なファンが存在して、彼が生活していたコテージや、彼が作り上げた庭を見に行きたいと思うのもうなずける。